GKの声
2-B
「すみません、小島有希先輩いますか?」
● ● ●
それは昨日のこと。
「えー!なにこの自販機使えないじゃん!」
この自動販売機の前で半べそをかいている彼女。
1年C組 。
「もう!100円返してよー!」
はー、とため息をついた。
「もーいいや むこうの自販機に行こ
あーあ、ロイヤルミルクティー飲みたかったな」
回れ右をして来た道を戻ろうとしたとき。
すっと、誰かとすれ違った。
(あれ…?この人)
は見覚えがあった。
(あぁ、けっこー噂になってる人だ
なんだっけ?なんとかッシャーっていう人だよね)
彼の名前は不破大地。
より1つ年上の2年C組である。
天才児であり問題児、ついたあだ名がクラッシャー。
(?何してんだろう)
不破は自動販売機をまじまじと見ている。
どうやら壊れている事をわかっているようだった。
そして、自動販売機の左側面でなにかごそごそ動かしている。
は不破が何をしているのか興味を持った。
(変わった人…)
かちゃり と音がした。
不破は当然のように自動販売機をあけた。
(え!?なにしてんのこの人!
まさかジュース盗む気じゃ…)
不破はそのまま自動販売機の中でごそごそ作業をしているようだった。
には丁度、自動販売機のふたで不破の姿が見えていない。
(絶対あの人盗む気だ!万引きだっ!
先生呼んだほうがいいのかな…でも逃げられちゃうかも
でもでもこの人こわいし、でも万引きを見逃すわけには…)
は正義感の強い少女だった。
迷った末に、不破に言った。
「あ、あの!何してるんですか!?先生呼びますよ!」
…
まるっと無視された。
「ちょ、聞いてん…」
「ふう、」
そう言うと不破は作業をやめ、自動販売機のふたをしめ、
鍵を再度かけなおした。
「へ?」
不破は何事もなかったように財布から100円を出し
自動販売機にお金を入れ、ジュースをとりだした。
はただ呆然と見ていた。
(も、もしかして…)
「直したんですか?」
は思い切って聞いてみた。
今度は無視されなかった。
というか、その時不破は初めての存在に気づいたようだった。
「ああ」
そう言うと不破はスタスタと行ってしまった。
…ただ、これだけ。
いや自動販売機を直した事をこれだけというのもおかしいが
は恋におちてしまった。
不破の声が頭からはなれない。
『ああ』
その一言がどうしても。
● ● ●
昼休み。
今は2年B組の教室の前にいる。
はある決心をしていた。
(ここだよね)
トントン
そろーっとあまり音をたてないようドアをあける。
教室の中はガヤガヤしていた。
近くにいた男の先輩には話しかけた。
「すみません、小島有希先輩いますか?」
「あぁ、ちょっと待ってな
小島さん!誰かよんでるよ!」
小島がこっちを向いた。
「はいはい」
立ち上がり、こっちへ向かってくる。
(よし、頑張れあたし!)
はなぜか緊張していた。
「どうしたの?」
小島は優しくに話しかけた。
(うわ、綺麗…)
「あ、あの、えっと、マ、マネージャーになりたくて…えっと」
緊張していたせいか、うまく口がまわらなかった。
「マネージャー?大歓迎!」
小島は嬉しそうににっこり笑った。
「水野はー…あれ、いないわ きっと屋上ね
水野には私から言っておくとして あなた名前は?」
「えっと、です!」は答えた。
「ちゃんね えっとーどうしよっかな
部活の説明もしたいし、今日の放課後は暇?」
「はい、大丈夫です」だんだん緊張がとけてきたようだ。
「じゃあ今日掃除終わったらまたここへ来てもらえる?
あ、それよりも部室のがいいかな わかる?」
「あ…わかんないです」
は一切部活とゆうものに関与していないため
どこに部室があるのか、それさえも知らなかった。
「いいのよ全然!じゃあまた掃除おわったらここへ来て」
小島は優しく微笑んだ。
「はい、わかりました!」
そう、ある決断とは
少しでも不破に近づくためにマネージャーになること。
男目当てと思われてもいい、は不破に会いたかった。
教室への帰り道
(今日から不破さんに会えるんだ!嬉しい!)
は期待でいっぱいだった。
20081130